国際離婚や別居に際するハーグ条約

▷ハーグ条約とは

ハーグ条約の正式名称は
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」です。

つまり親によって一方的に国を超えて連れ去られた子どもを
元の国に戻すかどうかを判断する国際条約。

「親なんだから誘拐になるはずがないし自分の国に連れて帰るのは当然の権利」
なんて軽く考えていると、知らない間に刑事罰の対象になってしまうこともある大切な条約です。

特に国際結婚や海外在住家庭には関係の深い条約なので、知らない人は覚えておきましょう。


▷原則と加盟国

ハーグ条約は「どちらの親が正しいか」ではなく
「まず子どもを元の居住国に戻す」ことが原則で
親権や監護権についての争いは元の国の裁判所で行われるべき、という考えに基づいています。

ですから、日本人同士の夫婦だから…ということは関係なく、
今の居住国はどこか、という視点になるのです。

現在ハーグ条約には100カ国以上が加盟していて、日本も含まれています。
アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリアなど
日本人の移住や結婚先として多い国々も含まれており、多くの在外邦人に関わる重要な制度となっています。


▷適用条件

ハーグ条約が適用される条件は
① 子どもが16歳未満であること
② 連れ去りが加盟国間で行われたこと
③ 連れ去りが不法であること

この3つの条件が必要です。
正当な同意がない移動は、条約の対象となります。

例えばアメリカから日本へ、母親が片方の子だけを日本に連れて帰ってきた時。
これが父親の正当な同意なしの移動だった場合は条約の対象となります。


▷家庭内暴力による逃避の場合

日本人妻が日本へ逃げかえる原因で最も多いと言われているのが
配偶者によるDVやモラハラによるものです。

もう耐えられない!と子供を連れて日本の実家へ帰ってしまうと
ハーグ条約にいう「誘拐」とみなされてしまうため、日本へ発つ前にまずは準備が必要です。

これは日本人同士の結婚であっても適応されるので注意しましょう。

ただし家庭内暴力からの逃避で帰国が必要な場合
正確な証拠を揃えて準備をしていれば条約が施行されないこともあります。
まずは大使館や領事館など信頼できる機関に相談しましょう。
証拠をそろえるための専門機関を紹介してもらえます。


▷子供が連れ去られた場合

子どもが連れ去られた場合は、条約に則り子どもの返還を求めることができます。
返還を求める申請は「中央当局」(Central Authority)に行います。
日本では外務省がその役割を担っており、現地の中央当局と連携して子どもの返還交渉が行われます。

中央当局とは…

アメリカ:
U.S. Department of State – Office of Children’s Issues
(アメリカ国務省 子ども問題局)

ドイツ:
Bundesamt für Justiz (BfJ)
(連邦司法庁)

フランス:
Ministère de la Justice – Bureau du droit de l’Union, du droit international privé et de l’entraide civile
(フランス司法省 国際私法・民事援助局)

スイス:
Federal Office of Justice – International Private Law Unit
(連邦司法局 国際私法部門)

オーストラリア:
Australian Government Attorney-General’s Department – International Family Law Section
(オーストラリア法務省 国際家族法部門)

国によって問い合わせる部門が異なりますので、居住局の中央当局を調べてくださいね。


ハーグ条約に触れるトラブルにならないためにも
離婚時や別居時には親権・監護権の分担を明確にし
将来的なトラブルを避けるための合意書を作成することが望ましいです。

自分たちには関係のないことだと思っても、子どもを持って海外生活をする日本人は全員知っておくべきなのがハーグ条約。
知識としてしっかり頭の隅に入れておきましょう。

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